手術や処置で使う麻酔について

手術関連

こんにちは、看護師の雪です。私は外科病棟で新人時代を過ごしました。なので手術前後の患者様をみる機会が多く、手術や処置で使う麻酔の目的や副作用等について今回は記事にしていきたいと思います。

麻酔の目的

・意識の消失
 手術の苦痛を出来るだけ取り除く。手術の音や臭い、環境などが不安や恐怖を助長する可能性があるため、可能な限り無意識のうちに終わるようにする。

・痛みの消失
 手術による痛みで、心拍数や血圧、呼吸数が上昇するのを防ぐ。また、痛みや苦痛に耐えられず、身体が動いたり、術部を触ったりして手術に支障が出ることを防ぐ。

・有害反射の抑制
 人間に無意識に起こる反射を防ぐ。

・筋緊張の消失
 骨格筋が収縮して身体が動くことで、術野が確保できなくなることを防ぐ。

麻酔の種類

全身麻酔

 吸入麻酔…マスクや気管内挿管により吸入させ、肺胞から血液中に入る。
 静脈麻酔…直接、静脈に注射するためすぐに血液中に入る。
 ・気道確保ができ、舌根沈下、吐物、気道分泌物による閉塞がない。
 ・中枢神経に作用し苦痛がない。
 ・長時間の手術が出来る。

硬膜外麻酔

 脊椎を穿刺し、硬膜外腔に局所麻酔薬を注入することで、脊髄前根(運動神経)と後根(知覚神経)を麻痺させる。

脊椎麻酔・腰椎麻酔

 脊椎(腰椎)を穿刺し、クモ膜下腔に局所麻酔薬を注入することで、脊髄前根(運動神経)と後根(知覚神経)、交感神経を麻痺させる。

 脳への移行を防ぐために麻酔薬の種類(比重)によって、保つべき体位が異なる。高比重液(髄液よりも重い)の場合は頭部を高く、低比重液(髄液よりも軽い)の場合は頭部を低くする。麻酔薬は10~15分で神経線維に吸着し、麻酔効果が固定されるため、その後の体位変換は可能になる。

表面麻酔

 粘膜や創部に塗布や散布する麻酔。

浸潤麻酔

 粘膜や皮膚の下に麻酔薬を直接注入して部分的に麻痺させる方法。皮膚の手術や抜歯などの小範囲の手術に用いられることが多い。

術中・術後に起こりえる麻酔による副作用や手術操作による症状

・嘔気・嘔吐

 胃の中に食物が残っていると嘔気や嘔吐を誘発しやすくなる。

→誤嚥しないよう体位を整える。制吐剤の使用。

・頭痛

 脊椎麻酔の後、麻酔薬が脳へ移行したり、髄液が漏れて髄液の圧が低くなったりすると、頭痛が生じることがある。

 全身麻酔の後、頭重感が生じることがある。

→どちらも体位を整えて安静にしていれば、ほとんど改善する。

・咽頭痛・嗄声

 気管挿管をして人工呼吸器を行った際に咽頭や喉頭への刺激となり、術後は一時的に咽頭痛や嗄声になることがある。

→ほとんどの場合数日で治まる。

・歯の損傷、口唇の傷・腫れ

 挿管するため器具を使って大きく開口させるため、弱っている歯があると歯が欠けたり折れたりすることがある。

また、挿管によって唇が傷ついたり、長時間挿管チューブを固定していたりすると、そのテープの刺激で唇が腫れることもある。

→弱っている歯がある場合は術前の麻酔科医の訪問時に伝える。口唇の傷や腫れは数日で治まる。

・悪寒、発熱

 麻酔の影響により、体温の調節能力が一時的に鈍くなるため、シバリングが起きたり、発熱が起きたりすることがある。

→発熱していてもシバリングが治まるまでは保温し、シバリングが治まったらクーリングや解熱剤で対応する。

・口渇感

 手術の前に前投薬として唾液の分泌を抑える注射を行う場合に生じる。

→術後すぐは絶飲食であり、含嗽や湿らせたガーゼを口に含むことを提案。

 

・術後せん妄

 高齢の患者で、術後に認知症のような症状がみられたり、異常な興奮や不可解な言動がみられたりすることがある。多くは、環境の変化によるストレスが原因で一時的なものがほとんど。

→安全のため一時的な抑制や薬剤の使用を検討。

・術後神経麻痺

 手術の部位によって不自然な体位をとる必要があるため、術後に手・足の痺れや疼痛の訴えがあることがある。

 脊椎麻酔のあと、神経を損傷したことにより、痺れ、痛み、麻痺などの症状が残ることがまれにある。

→体位調整を行い、しばらくしても改善しない場合は神経損傷を考え医師に報告。

・硬膜外腔の感染、膿瘍、血腫形成など

 硬膜外麻酔のカテーテル挿入時、血管損傷による血腫を作ったり、カテーテルを通じて細菌が入り込んだりして感染、膿瘍を形成し、それらが神経を圧迫することがある。

→刺入部付近の疼痛や薬液注入時に疼痛がないか観察が必要。

・アレルギー反応

 麻酔薬や点滴などのアレルギー反応として、蕁麻疹や喘息様の症状が起こることがある。

→原因となった薬剤を止めて医師に報告。アレルギーを抑える治療を行う。

・悪性高熱症

 約10万例に1例の割合で、麻酔薬に特異な反応を起こし、高熱を出してショック状態になる場合がある。

・肺塞栓症

 周手術期に安静にしていると、下肢の血流が停滞し血管の中で血液が固まって血栓が出来ることがある。血栓が血流によって肺まで流され、それが肺の血管で詰まると、突然胸痛や呼吸困難が生じ、場合によってはショック状態に陥る。特に喫煙、肥満、高脂血症、下肢静脈瘤などの既往があるとリスクが高くなる。

→弾性ストッキングの装着、下肢にフットポンプを装着して下肢の静脈に血栓が出来るのを予防する。

さいごに

手術室看護師の方からしてみたら物足りない内容かもしれませんが、消化器外科で働く看護師には麻酔や手術を行う際に知識として知っていてほしい内容を上げてみました。

参考にしていただけたら嬉しいです。

術後の硬膜外麻酔麻酔の管理等については別記事でお話ししたいと思います。

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