【知らなきゃまずい!】既往等による周手術期への影響

手術関連

こんにちは、物忘れが得意な看護師の雪です。

周手術期看護を行うにあたって、多くの患者様が当てはまる項目が多いと思おうので、今回記事にしました。

高血圧

手術中

 高血圧の患者は、常に血圧が高い状態が常態化している。高血圧が続くと、血液の圧力に耐えるために、動脈の血管壁が厚くなり、血液が流れる内腔が狭くなる。内腔が狭いと流れる血液の量が少なくなっているため、手術の麻酔の影響により、血管が拡張すると、血圧が大きく下がる。

 血圧の下げ幅が大きく変動すると、臓器への血液も行き渡らなくなり、心筋虚血や脳血管障害、腎虚血圧の発症率が高くなる。つまり、正常な患者よりも、麻酔薬や出血による血圧低下を起こしやすい状態にある

手術後

 手術が終わると麻酔が切れ、麻酔による血管拡張作用がなくなる。その結果、血圧が急激に上昇する可能性がある。脳や心臓が急激な血圧上昇に耐えれなくなり、脳出血や心不全を起こす危険性がある

 また、創部痛やストレスなどによる交感神経の興奮から、血管が収縮して血圧が上昇しやすくなる。

高血圧患者で問題なのは、血圧の値そのものではなく血圧の変動が大きいことを踏まえ、こまめなバイタルサイン測定が重要となってくる。

糖尿病

高血糖による影響

 ・好中球の貪食機能が低下する(高血糖により貪食作用が低下→免疫が低い
 ・血流の悪化(高血糖による動脈硬化)
 ・免疫反応の低下(発熱や炎症反応の遅延)→感染リスク、創部感染

喫煙

タバコに含まれる成分と身体への影響

 ・ニコチン…気道分泌物を増やしたり、気管支を狭くする。
 ・タール…気管を狭め、呼吸機能の低下につながる。また、気道の繊毛運動を悪くし、気道分泌物が溜まりやすくなる。
 ・一酸化窒素(NO)…血管拡張の要因となり、血圧低下を助長するため、血圧の調節が難しくなる。
 ・一酸化炭素(CO)…本来、血液中のヘモグロビンは酸素と結びつくが、一酸化炭素は酸素より200倍強い力でヘモグロビンと結びついてしまうため、体内は軽い酸欠状態となる。

喫煙による全身麻酔・手術への影響

 ・気道分泌物の増加
 ・気道の狭窄
 ・血圧コントロール困難
 ・術後感染、創部感染リスクの増加…術後の創に十分な血流や酸素が供給されず、創部の治りが遅くなり、感染も起きやすくなる。また、免疫力の低下もある。

呼吸器疾患のある患者

慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息など。

→看護:術前・8週間以上の禁煙の必要性を説明。呼吸リハビリテーションの実施。
    術後・疼痛コントロールを積極的に行いながら、早期離床を進める。深呼吸や排痰援助により、無気肺や肺炎予防になる。

CKD・透析患者

慢性腎臓病(CKD)…腎機能障害が3ヶ月以上続く状態のことを言う。原因疾患には、糖尿病、慢性腎炎、高血圧などがあり、CKDが進行すると透析が必要になる。

CKD患者は術後の急性腎障害(AKI)や心血管合併症の発症率が高い。特に透析患者では非透析患者に比べて手術関連の死亡リスクが高く、尿毒症、脳心血管疾患、糖尿病の悪化などの術後合併症のリスクも高くなる。

→看護:NSAIDs(ロピオン、ロキソプロフェン等)を極力使用しない!NSAIDsは腎機能を悪化させる可能性が高いため、鎮痛剤はアセトアミノフェン(アセリオ、カロナール等)を使用する。
      体液量(IN/OUT)の管理。脱水は腎血流量を低下させ腎機能の悪化をまねくため、適正な体液量を管理する。
      透析患者の場合はシャント閉塞に注意。術中は血圧低下や体位による上肢の圧迫などでシャント閉塞が起こりやすくなるので、術直後には必ず、シャント音とスリルの有無と強弱を確認し、術前の状態と比べて評価を行う。

抗血栓薬内服中の患者

抗血栓薬とは、「血液をサラサラにする薬」と説明している薬のことで、抗血小板薬と抗凝固薬に分類される。

抗血栓薬を内服したまま手術を受けると出血のリスクが高くなるため、周手術期には中止するのが一般的である。しかし、休薬することによって原疾患(脳梗塞や心筋梗塞など)が悪化、あるいは新たに発症するリスクがある

→看護:術前にきちんと内服中止しているか確認。
      術後には出血合併症に注意し、さらに原疾患の悪化兆候がないかも注意する必要がある。

⭐︎抗血栓薬を中止すると血栓閉塞症を発症するリスクが極めて高い患者さんには、ヘパリン置換を行う。ヘパリンは半減期が短く、中止後4〜6時間で効果が消失するため術前にヘパリンを中止することで手術時の出血リスクを抑えることができる。

術後は、出血がないことを確認後ヘパリンを再開し、病態が落ち着いたら抗血栓薬の内服を再開する。ワーファリンは作用するまでに時間がかかるためPTーINRが術前の値程度に戻るまではヘパリンと併用する。

高齢者

循環器合併症…高齢者は加齢による機能低下に加え、心疾患の罹患率が高い。また、体液や血液の喪失、術後の疼痛などにより、循環器系に変動をきたしやすい。特に麻酔の影響や輸液による心負荷により心不全を起こしやすくなる

→観察:血圧、脈拍、中心静脈圧(CVP)、心電図、創部からの出血、尿量やドレーンからの排液、水分出納のバランスチェック

呼吸器合併症…高齢者は加齢による肺機能の低下に加えて、手術における麻酔や鎮静剤の影響により痰の喀出が阻害され、容易に肺炎や無気肺などの呼吸器合併症を起こす

→観察:呼吸数、呼吸の深さ、肺雑音、血液ガス
 看護:呼吸のしやすい体位の工夫や酸素吸入、分泌物の吸引、深呼吸の促し

 

術後精神障害…身体的・心理的侵襲の高い手術後の睡眠障害がせん妄発症に強く関連しているとされている。

→観察:麻酔からの覚醒状態(呼名反応、指示反応、痛みに対する反応など)
 看護:疼痛を緩和し、生活リズムを整える、早期離床

肥満

 肺合併症が起こりやすい。肥満の患者は、胸やお腹に重石をのせているのと同じ状態にある。自発呼吸でも、全身麻酔で人工呼吸を行っている最中でも、肺がつぶれやすく、膨らみにくい状態にある。そのため、肺での呼吸がうまくいかなくなり、低酸素状態になりやすくなる

他にも気管挿管がむずかしかったり、脊椎麻酔・硬膜外麻酔麻酔が難しかったり、点滴が難しかったり…。

低栄養

 手術前
 術前の食道がん、胃がん、大腸がんなどでは通過障害で食事が摂れなくなっていることも多く、またがんによる代謝の亢進でさらに低栄養が進んでいることが多い。
 術前の低栄養は術後合併症の発症や死亡率を増加させる。そのため、術前から低栄養に陥っている場合は、術前2週間程度の栄養管理を行なった方がよい。

→看護:通過障害で腸が使えない場合は、点滴による栄養管理(中心静脈栄養)を行う(エルネオパ等)。

 手術後
 術後は食欲が出ず十分に食事が摂れなかったり、縫合不全やイレウスといった術後合併症を生じると長期間の絶食を余儀なくされる。

→看護:食事摂取量の把握や食事形態アップに伴う腹部症状等の観察。不足している栄養量は、摂取できるのであれば経腸栄養剤や経口補助食品を医師の指示のもと追加。経口摂取が難しいようであれば点滴(経静脈栄養)を行う(ビーフリードやイントラリポス等)。

さいごに

看護師として働いていると、学生の頃学んでいたような1つの疾患しかない患者様は少なく、複数の疾患や既往を持っている患者様が多いため参考になれば嬉しいです。

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